2023年12月16日(土)の「プロフェッショナル 仕事の流儀 ジブリと宮崎駿の2399日」を見ました。
以下、まとめと感想と少しネタバレです。
スタジオジブリの映画監督、宮崎駿(82)はいかにして新作「君たちはどう生きるか」を作り上げたのか。2399日の記録。
この取材はカメラ片手に書生として通うことを条件に20年近く続いていた。
生きるってどういうことだか俺だってわかってるわけじゃない。
何で俺だけ生きてるんだろう。 (宮崎)
2013年9月 引退会見を行う。
2016年7月 「ちょっと書いたんだけど」企画書を書き上げる。
2017年5月 「君たちはどういきるか」の映画の脚本にあたる絵コンテを執筆中。
半分近くまで進んでいるという。
机の傍らに主人公とおぼしき少年のスケッチ。
「死の使いという感じがする」サギ男のモデルはプロデューサーの鈴木敏夫氏。
俺は本当のことを言うと、宮さんがもう一回やりたいって言うとき、
平たく言えばすごい心配だったんですよ。
大監督が年を取って力のないものを作る。
目も当てられないって多いじゃない? (鈴木敏夫)
鈴木は恐ろしい手に出た。
2018年1月
庵野秀明氏の率いる「スタジオカラー」から天才アニメーター本田雄を作画監督として直談判の上引き抜いた。
俺のこと恨んでいるだろうな (鈴木敏夫)
本田の登場が宮崎を追い詰めていく。
2018年4月 パクさんこと高畑勲氏が亡くなる。
高畑は宮崎がただ一人恐れた映画監督だった。
撮影者は宮崎が恐れたわけがすぐわかった。
すさまじいまでの理想を無限化する力、映画製作が遅れに遅れ、公開が危ぶまれてもたじろきもしなかった。「かぐや姫の物語」
妥協、迎合、一切なし。
間に合わせるためなら、何をも厭わない宮崎とは正反対だった。
撮影者が作品を完成させるために間に合わせるのは作品の質を落とすことに
繋がらないと話すと
繋がります。
ぼくは合わないです、あなたと。(高畑勲)
鈴木氏いわく、「狸合戦ぽんぽこ」を見て宮崎さんはずっと泣いていた。
なんでもあの映画は自分たちの若き青春の日を描いたそうで、
主人公の正吉が高畑で権太が宮崎だそうだ。
「宮さんってずーっとさ、高畑さんに対して片思いの人だったよね」
長いお通夜やってんな、俺は。(宮崎)
宮崎は高畑の死が受け入れられず、通夜が一ヶ月以上連日続けられた。
2018年6月 主人公に立ちはだかる大伯父が登場。モデルは高畑。
鈴木「高畑さんが何者かっていうのをやりたいんでしょ、
自分にとって何者だったのか」。
2018年8月 宮崎さんは山小屋で絵コンテを書くという。(書けていない)
散歩をしていると映画で描かれた情景と交差する。
高畑を探しているようだった。
「映画はつかむんだよ、パクさんの首根っこをグッと。
俺もつかまれてるんです。逃げることできないんですよ。
タタリ神みたいなもんでしょ?」
宮崎さんと高畑さん
母が不治の病に侵されていて、内気で「ウジウジして人の目に合わせて生きてて、
壮烈な鬱に入ってね」と語る少年時代だった。
そんな宮崎を変えたのは5つ年上の高畑だった。
高畑は無茶な要求を繰り出し、駆け出しのアニメーターだった宮崎は
それに食らいつくたび変わっていた。「太陽の王子ホルスの大冒険」
鈴木氏いわく宮崎は高畑の筆跡の真似をした。
それまでの宮崎は神経質で細かい感じだったが、高畑はおおらかな字を書いた。
そこまで惚れ込み尊敬した。「アルプスの少女ハイジ」
しかしその後宮崎のアイデアを高畑が受け入れないことに憎しみが湧いた。
「母を訪ねて三千里」
その後高畑と別れ自分も監督になる。「未来少年コナン」
しかし8話で力尽き絵コンテが書けなくなったとき高畑が助けてくれ、
その絵コンテで作品が広がり傑作といわれた。
その後高畑の元に戻るが、高畑は近藤喜文に信頼を寄せるようになっていた。
「赤毛のアン」
鈴木氏いわく「ものすごい嫉妬なのよ(近藤さんに)」
そこに現れたのがサギ男こと鈴木敏夫だった。「漫画を描きませんか?」
話はトントン拍子に進んだ。「風の谷のナウシカ」
宮崎はプロデューサーは高畑に頼んだ。
「俺は15年間パクさんに青春を捧げた。でも何も返してもらってない。
監督がプロデューサーをやる。つまり手が出せない。本当につらい仕事だ。
それを味あわせたい。」
鈴木「復讐だよ。それを支えに作りたいって。」
高畑への復讐が宮崎の人生を変えるが、高畑は「ナウシカは30点」と
雑誌の取材に答えた。
宮崎は「僕は許せない」と雑誌を引きちぎった。
高畑に褒めてもらいたくて作り続けた映画。
宮崎の作る映画には必ずと言っていいほど旅立ちのシーンから始まるという共通項がある。
宮崎は主人公眞人として旅に出る。
行く手にはジブリのような塔。
そこに高畑はいる。
でもひとりでは怖いからサギ男(鈴木氏)を道連れに。
これが最後の旅になる、と宮崎は言った。
2018年9月 大伯父が一向に出てこない。
2018年10月 恒例の社員旅行に出かける。
旅行から戻ると不思議なことが起こったという。
一泊した翌日、宮崎の部屋に覚えのない麦焼酎があったそうだ。
創作に没頭しその世界に入りこもうとするとき、宮崎は突然記憶を失うことが
あるという。
脳みそのフタが開く (宮崎)
大伯父を描き始める。
世界の中心にいる高畑に会いに行く。
言葉は交わす、声をかけているから。
2018年11月 大伯父の出たパートは全部描き直しになる。
宮崎「つまんないんだよ」。
鈴木氏「乙事主だもん、宮さんは。生きる執念が強くなってる。」
この頃映画の冒頭シーンが出来上がる。
感情をうちに秘めたこれまでにない主人公。
本田によって宮崎アニメは一新された。
宮崎「エヴァンゲリオンが越してきたなって、現代的になった」
居場所はもう映画の中にしかなくなりつつあった。
2018年12月 死をやたら語るようになる。
大晦日、絵コンテを描いていると消しゴムが見つからない。
宮崎は高畑が持っているから返してと部屋をウロウロする。
高畑の死から8ヶ月経ってなお、宮崎は高畑の影に怯えた。
そこには理由があり、ナウシカが生き返るシーン、サツキとメイが引っ越す
シーンなど、宮崎が作った映画で印象的なシーンを
高畑のアイデアを使うことがあったからだ。
2019年1月 宮崎は誕生日を近所の子どもたちや会社に盛大にお祝いしてもらう。
絵コンテが山場を迎えていた。
高畑の死から1年、絵コンテが完成した。
宮崎「やっとパクさん葬ったんです、絵コンテで。」
映画のクライマックス、眞人は大伯父に再会する。
すると高畑は宮崎に最後の頼み事をする。
宮崎は断り、高畑が築き上げた世界が崩壊する。
それは宮崎からの「さようなら」。
宮崎は映画の中で高畑と完全に決別した。
宮崎は糸が切れたようになったが、絵コンテが終われば次はアニメーターが描いた絵を徹底的に直すのが宮崎の常だが、しかし鉛筆が走らない。
2021年7月 映画のラッシュで一部見ていないものがあるという。
しかしそうではないようで・・・
宮崎「脳のフタ開けすぎた。狂気の境界線に行くんですよ。」
一日に何度も屋上に行くようになっていた。
宮崎「こういうときにどうしたらいいんだろうねって話をする相手としては
パクさんが一番いいな」
高畑が教えてくれた映画が宮崎をつなぎとめていた。
2022年9月 映画のアフレコが始まる。
眞人役の山時聡真さんの声に宮崎は笑みを浮かべます。
作画監督の本田氏
「退屈が死ぬほど嫌だろうから、次やらないと言ってるけど、
やるんじゃないですかね」
「やってくれるといいな」
2022年12月
宮崎はコップを洗いながら
「ああ、めんどくさいね。ひとつ終わるとまた人生は続いてると気がついて」
映画のアフレコで大伯父役の火野正平のパート。
宮崎「これで限界ですか」
最後のセリフを何度も取り直す。
「ああやれやれ。この世に戻ってくるのめんどくさいな。
冗談じゃないよ、全く。」
そういって絵に色付けをしていたのはナウシカに見えた。
★★★★★★★★★★
宮崎さんにとってどれだけ高畑さんが大きな存在なのかよくわかりました。
でもやはりスタジオジブリといえば宮崎駿です。
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