2024年4月20日(土)の「NHKスペシャル」は
「H3ロケット 失敗からの再起 技術者たちの348日」でした。
以下、まとめと感想と少しネタバレです。
2024年2月17日 H3ロケット打ち上げ成功
・国内最大の大きさとパワーを持つ新型ロケット
・日本にとって30年ぶりのロケット打ち上げ
2023年3月7日の打ち上げ失敗の原因究明から打ち上げ成功までの
1年間に密着
激化する宇宙開発競争
・気象情報、地図アプリ、インターネットに欠かせない人工衛星
・2019年から2023年の5年で衛星の打ち上げは97機から212機へ倍増
・その大半をアメリカ、中国が占め、日本はロシア、フランス、インドに次ぐ
ポジション
・現在各国が競っているのは大型ロケットの開発
→人工衛星が性能向上に伴い重くなる傾向
→月などに物資や人を運ぶ未来がくると言われているため
日本の大型ロケット開発
・今までの大型ロケット打ち上げはH2A、H2Bで成功率98.2%
・高額な費用がネック(H2A1回の打ち上げ費用100億円)
・アメリカが1回打ち上げ費用75億円ともいわれる中このままでは負けてしまう
・H3ロケット1回打ち上げ費用50億円を目指す
・開発の中心を担うのはJAXAと三菱重工業
・それぞれの専門ごとに150社以上のメンバーが参加
・2000億円以上の国費が投じられた
・9年がかりで大型エンジンを開発
・部品を減らしてコストダウンしつつパワーアップを実現
・高さ57メートル、運べる重さ従来の1.3倍になった
痛恨の1日<2023年3月7日>
・発射5分過ぎ、2つ目のエンジンに火がつかない重大なトラブルが発生
・指令破壊信号を送信しロケットを破壊した
・地球観測衛星だいち3号ALOSー3を失う
(国が開発費280億円を投じ防災や災害対応の切り札として期待されていた)
JAXA、H3プロジェクトのプロジェクトマネージャの岡田匡史さんは
指令破壊信号送信から15分ほど放心状態だった。
(飛行を)中断すると信号が途絶えるので、みんなで頑張ったH3が
そこでいなくなってしまったっていう感じですかね
一番思うのはALOSー3を失ったことの重さです
(JAXA岡田さん)
残された手がかりは機体が破壊されるまでの間、地上に刻々と届いていたデータ。
データは第2段エンジンの周辺で電流電圧に異常が起きた可能性を示していた。
故障の木解析という手法で原因究明
・考えられる原因をすべて書き出す
・ひとつひとつの可能性を洗い出し、該当しないものを除外、原因を絞り込んでいく
・ロケットの場合、膨大な数の項目を洗い出すことになる
・JAXAとメーカーが手分けして目標の時期までにやるべきことをやる繰り返し
本当に起きたことを再現するのは難しいんですよね、地上で
ちょっと条件が変わると再現しなかったり
そんな中で安易に丸も打てないしバツを打つと復活もできない
一回バツを打ったものは検討の対象から外すことになる
ものすごく慎重にやらないといけない
(JAXA岡田さん)
H3ロケットの重要すぎる使命
・2024年度までに7つの人工衛星を宇宙に送り届ける予定だったがすべて延期となる
・火星衛星探査計画MMXは2年延期、月極域探査機LUPEXの計画に遅れが生じた
→このままでは世界の宇宙開発競争から脱落することにもなりかねない
意外な救世主が登場
・原因究明ができない中、JAXAH3プロジェクト電気班責任者の小林泰明さんが
受け取ったメール
・だいち3号の担当者(JAXA人工衛星担当の川北史朗さん)が詳細な資料を見せてくれたら何か役に立てるかもしれないという内容
最初は半信半疑というか、面倒な人たちの、いろいろ言ってくる人たちの
一種かと思っていた
(JAXA小林さん)
・川北さんと小林さんに面識はなかった
・集まった協力者の4人はかつて人工衛星の電気的な故障を究明した経験があった
・第2段エンジンで火花を起こす点火装置に注目
・30年前に開発、これまで200回近くロケットの打ち上げを支える極めて
信頼性の高い装置
・オンオフを繰り返し火花を起こすが、規定を超えて電圧が上がる可能性があると
分かった
→様々な条件を変えて試験を繰り返す
<結論>電気的な障害が起こる可能性はゼロではない
→原因だと断定はできないが対策を打つべきという判断となる
三菱側でも対策を取るべき場所が発見
・新らたに導入された制御装置(エンジンやタンク圧などの制御をおこなう)で
部品の故障などで過剰な電流が流れればエンジンに着火しない可能性がある
打ち上げ失敗から170日、考えられる要因は7つまで絞られた
→万全を期すためすべてに対策が取られた
全部確認しきって自信を持って打ち上げに臨みたいと思っています
(JAXA岡田さん)
JAXA岡田さんのこれまで
・ロケット開発一筋35年
・エンジン開発試験で爆発という大きな事故を経験
・3度の打ち上げ失敗を経験
トラブルのリスクを減らす難しさを痛感
失敗のたび原因を究明しロケット開発を前進させてきた
H3が運ぶ超小型人工衛星とは
・地球観測衛星CE-SAT-1Eと熱赤外超小型衛星TIRSAT
・だいち3号と同じ重さのダミー衛星VEP-4(ロケットと衛星の分離機能の確認)
もうやり切ってる あとは答え合わせが始まる
(JAXA小林さん)
H3ロケット2号機打ち上げ<2024年2月17日>
<打ち上げのポイントは3つ>
①第2段エンジンの着火
②超小型衛星の軌道投入
③ダミー衛星の分離確認
(ロケット打ち上げが成功)頑張れ。
(補助ロケット分離成功)よしきた、頑張れ。頑張れ、頼む。
(第2段エンジン第1回燃焼開始)よしきた!(握手、涙ぐむ)
(CE-SAT-1E分離)よっしゃ!(周りとメンバーと抱擁、涙ぐむ)
(VEP-4分離)打ち上げから1時間48分後
よっしゃー!(周りと握手) (JAXA岡田さん)
おおーっ!(スタッフと抱擁) (JAXA小林さん)
失敗を失敗で終わらせないことが大事 (JAXA小林さん)
神様ではない以上100%ということはありえない
迷ってもしょうがないことは迷わないというか
自分の場合は迷いなくシンプルにこの道歩いてきたことで
途中で厳しい状況になっても逆に乗り越えられた
(JAXA岡田さん)
ロケット開発の課題
・次のH3ロケットが種子島に向けて送られた
・今後機体を量産できる仕組みが整えば打ち上げコストは目標の50億円に
近づくという
本当の勝負はこれから、日本の宇宙開発の未来を開く挑戦が始まっている
★★★★★★★★★★★★★★
H3ロケットの2号機の打ち上げ成功は日本にとって喜ばしい出来事でした。
が、アメリカでは民間企業でどんどん打ち上げ成功しているところを見ると、
何がそんなに違うんだろうと思ってしまいます。
とにかく日本はこのH3を突き詰めていってほしいと思いました。
NHKスペシャル 土曜午後10時~ NHK総合
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