2024年6月22日(木)の「新プロジェクトX」は
「夢は、交通事故ゼロ~自動ブレーキへの挑戦」でした。
以下、まとめと感想と少しネタバレです。
交通事故で年間3千人が命を落としている日本で「ぶつからない車」を
作ろうとした技術者たちの話。
現在、衝突被害軽減ブレーキはヨーロッパでは2024年4月から、
アメリカでは2029年までに義務化されることになっている。
政府の依頼で動き出した安全な車の開発
・1990年代、交通事故による死者数は年間1万人以上
・政府はメーカーに安全な車の開発を要請
・エアバックや警報音を鳴らして居眠り運転を減らす技術が生まれた
富士重工業(現SUBARU)の挑戦
・国内生産台数は、大手9社中最下位
・政府の要請を受けて集めたメンバーは4人
<目指したもの>
・CCDカメラをつけた運転支援システム
・危険を察知し、警報音を鳴らし運転手にブレーキを踏むよう促すもの
<問題点>
・映像を分析するコンピューターが荷台を埋め尽くす
画像判断の可能性を感じる
・1997年、技術提携をしていた日産が訪ねてくる
・カメラが危険を察知する様をみて、その技術を譲ってほしいと持ち掛けられる
もし本格的に日産さんがこの領域に入り込んでくれば
富士重工はひとたまりもないだろう
もう完全に駆逐されてしまうんじゃないかという危機感を持ちました
この技術は絶対渡してはダメだ
開発本部 紺野さん
危険を察知するカメラ搭載の車の実用化に動き出す
・会社に掛け合い販売に向け10人のメンバーを募る
・車両実験担当だった柴田さんも加わる
車両実験担当 柴田さん
・行動力はあるが、上司へ歯に衣着せぬ言動が物議をかもす
・メーターやウインカーなど電気部品に問題がないかチェックする実験担当
・知識をどれだけ身に着けても開発には関われない思いを抱える
・(試作品をみて)こんなの まだ世に出せないっすよ
・結局車会社で企画を転がしていくのは機械系(エンジンやボディ開発)の
人たち
・紺野さんにも ワーワーため口で文句を言って
一緒に悩んでくれるという感じ 全く否定はされなかった
車両実験担当 柴田さん
当時の他社の開発の状況
・危険を察知するレーダー
・衝撃できつくしまるシードベルト
自信を持って売り出した運転支援システム
・運転支援システムのプロジェクトを強化しメンバーは20人を超える
・リーダーだった紺野さんが部長に昇進したため柴田さんがリーダーに名乗り出た
次のステップの仕事がきた 柴田さん
・カメラを改良し車間距離や白線など様々な道路環境を認識させた
・車線逸脱警報
・路面凍結警告
・2003年8つの機能を盛り込み(ADA)を売り出した(搭載価格70万)
⇒285台しか売れず
・警報を鳴らして注意を促しても後の操作はドライバー次第
・客には安全装置自体が受け入れられない、車が安全なのは当たり前
・部品の故障が次々と発生しクレームが殺到
・柴田さんがユーザーに直接謝罪に向かうとこの機能がないと困ると言われた
開発チームに最大の危機が訪れる
・2005年会社の経営が悪化、700人規模のリストラをすることに
・運転支援システムの開発予算は20分の1に下げられた
・開発の根幹を支えていたステレオカメラ開発担当の十川さんがチームを去った
これから俺はどうすればいいんですか? 柴田さん
それをお前が考えるんだ 紺野さん
・開発拠点を失い工場の片隅に追いやられた
残ったメンバー12人で自動制御ブレーキの開発へ
・工場があった群馬県庁では地元企業への補助金を出していた
⇒当初のプラン(警報が鳴る)では補助金が下りなかった
⇒顧客のためには自動でブレーキをかけて車を止めるところまで実現しようと考える
この領域はもともと他の自動車会社は止めてない ここで勝てる
プロジェクトリーダー柴田さん
・補助金は開発費の1年分
⇒1年で結果を出さなければプロジェクトは終わる
ブレーキ制御と画像認識
・ブレーキ制御の開発は若手に任せる
・画像認識の精度を上げる必要がある
・ブレーキはどんな状況でも正確に働かなければ逆に大事故になる
・冬の北海道、深夜の首都高、北陸の海岸や火山灰が降る桜島などチーム全員で
日本の主要道路を走破した
画像認識の最大の問題:夜の雨
・窓ガラスについた水滴で映像がにじむ
・光を反射して前の車を正確に認識できない
画像認識担当の斎藤さん
・ライバル会社でやりがいを見いだせず中途入社
・雨の強さの違い、窓ガラスの汚れ具合の違いがあり解決の糸口が見えない
突破口となる映像
・車が見えないほど暗い雨の日の映像⇒テールランプだけがはっきりと見える
⇒あえて映像を暗くすることで雨粒の影響を抑えテールランプだけを認識させる
⇒車間距離を正確に計算できる
・雨が降った夜の千葉の道を7台の車で走った
⇒撮影した映像から車間距離を測ることができた
これはできたんじゃね?
画像認識担当 斎藤さん
・2007年秋 社内でプレゼンで走る車に人形が急に飛び出すが
自動ブレーキで止まる映像を見せる
・販売にGOサインが出る
・2010年 二つのカメラで完全停止を実現
・事故率6割減を実現
・世界累計600万台以上の売り上げ
自動ブレーキシステム搭載車登場のその後
・完全停止の実現から2年後、国内大手各社もシステム導入へ
・2021年、衝突被害軽減ブレーキ義務化(国産・新型車)に
・スバルでは現在数百人規模のメンバーが自動ブレーキシステムに関わる
・ブレーキ開発を行った丸山さんはADAS開発の部長へ、柴田さんは役員になった
・世界の企業と手を組みぶつからない車を進化させている
・2030年までに交通死亡事故ゼロを実現しようとしている
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富士重工は2017年に株式会社SUBARUへ社名変更しています。
日産とは業務提携をしていましたが、日産が経営不振に陥ったことで保有株式は
2000年にすべてGMに売却されました。
そのGMも業績悪化に伴い富士重工株20%をすべて放出、
今度はトヨタが筆頭株主になりました。
運転支援システムの技術を譲渡してほしいと日産から提案があったのが
1997年だったことを考えると、何を選ぶかどの道を進むかは会社にとって
大きなことなんだなと改めて思いました。
今みなさんが生き生きと仕事をされているのを見るとうれしくなりました。
新プロジェクトX 毎週土曜夜7時半~ NHK総合
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